本文へスキップ

佐渡島に古くから伝わる伝統的お菓子 おこし型

なまあず本舗は佐渡島とおこし型を応援しております。

型の購入は、なまあずショップ楽天市場店へ

彫り方carving


私の祖父がおこし型の型職人(本職は大工)でしたが、祖父も誰かに教わって作ったわけではなく、型を見ながら、それを彫るためにはどうすればいいか?を創意工夫して作っていたと言います。一時期佐渡に帰ると、ホームセンターなどに型が販売されていていいな〜と思っていたら、すべて祖父の作品でした・・・ということも。

さて、おこし型を彫る職人がいなくなった、と言われて久しいです。かなり難易度の高い技術なのですが、現代の工具を利用し、工夫して、割り切れば(ここが大切!)、比較的誰にでも楽しめる木工の一種であることがわかってきました。私の研究では、当初祖父が使っていた高級かつ特殊な工具を使わなくても大部分の型は彫れます。

おこし型職人の祖父のおこし型を彫っている風景(youtube)

注意)あくまで、株式会社なまあず本舗代表取締役の石塚が祖父の遣り方を参考に、創意工夫したものです。木工経験者は、あるものを利用すればうまくいくかもしれませんし、あくまで参考程度と思って読んでいただければと思います。

準備するもの


<電動彫刻刀>

 一から彫るのが面倒な場合に活用します。時間短縮と体力温存に有効です。私も1〜2作目は利用しました。3〜4作は使いませんでした。深いものは素直に利用するといいでしょう。浅いものは彫刻刀・ノミだけで十分いけます。
 私はPROXXONを利用しています。比較的短時間しか使わないので、使いやすいものを選んでいただければと思います。これがないと深く掘るとき体力を消費してしまいます。量産しないなら持って無くても大丈夫です。

<ルーター>
 主に仕上げや、作品修正に利用します。私はPROXXONを利用しています。母は小型で扱いやすいMM20(26700)、私はやすり系が充実のハンディマルチルーター28473を利用しています。電動彫刻刀と異なり必須だと思います。下に紹介した2機種はお勧めですが、やすり利用なら、ペンサンダー(28594)もお勧めです。安価ですし細かい仕上げに良いようです。ただあまり売っているところを見たことがありませんし、消費が多い紙やすり部分の入手性に難があります。

MM20(プロクソン)ミニルーター
 小型軽量で非常に扱いやすいです。2.35mm径しか使えないのが唯一の欠点。切り出しなどで荒れた木面を慣らすのに重宝します。使いやすいハイスビットを選んでください。初心者は丸型と、棒形が使いやすいと思います。エッジを効かせるためにハイスカッターも試してみると良いと思います。くれぐれも長時間連続使用せず、休み休み使いましょう。

28473(プロクソン)ハンディーマルチルーター
 先端が豊富に付属していますが、木工に使えるものは少ないです。ただおこし型以外の用途にも使えるので、損はありません。大きいので、MM20が使えないときに利用します。取り回しがあまり良くないです。MM20と違って連続使用をしようと思えないのがある意味メリットでもあります(・・・)。
 付属では、フラップホイールペーパーが使いやすいです。速度を落として慎重に利用すると表面がなめらかになります。
 平面を仕上げるには、ディスクペーパー2種セットです。もう少ししなるか?と思ったのですが無理です。素直に平面に利用しましょう。かなりきれいに仕上がります。
 一番活躍するのはロールペーパーでしょう。始めだけ専用シャフト付を買いましょう。最初に利用するときは削られすぎに注意しましょう。先端がとがったタイプとそうでないタイプの2種類あります。1つだけならとがった方をお勧めします。
 私は持っていませんが、タングステンカッター系も木には相性が良く効率が良いそうです。

<木工用のみ>

 大工用ではなく、細くて先が彫刻刀の丸刀のようなタイプと平刀のようなタイプと切り出しのようなタイプの3タイプあればベストです。ない場合は、丸刀タイプだけでもなんとかなります。鶴のようなものには小さめの丸刀が必要になりますが、彫刻刀にするか、のみにするか?悩むところです。

<彫刻刀>
 できればセットで販売している安いヤツではなく、一本一本別売りしている、ちょっと高級なものが欲しいところです。三角刀と切り出しは良いモノが欲しいです。丸刀は、幅など種類が豊富です。彫るものよって変わります。ツルやキクを彫るなら、幅・深さを決めて買いましょう。
 深い型の場合、通常の彫刻刀ではうまく加工ができません。先端が曲がっている特殊なものが必要となります。市場価格で3千円から6千円くらいしますので、おいそれと買えませんが、必要に応じて購入しましょう。

<小麦粘土・魔法の砂・キネティックサンドなど>
 おこし上がりを試すために使います。祖父は小麦粘土を使っていましたが、くっついて効率が悪いです。型に上新粉などをまぶしてから、小麦粘土を詰めて・・・のような工夫が必要でしたし、小麦粘土の寿命も短いので私的にはあまり好きではありませんでした。
 しかし、近年は室内砂遊び用で、シリコンなどを含んで型崩れしにくいキネティックサンドなどの名称で売られている砂があります。これを使えば型にほとんどくっつかずおこし上がりを正確に把握することができます。ダイソーでも魔法の砂という名称で販売していたりします。作業効率が飛躍的にアップしますので是非入手しましょう。
 ただ、キネティックサンドはエッジが綺麗にでる反面、おこし型の団子特有の表現にはなりません。そのあたりは経験してみないとわからないので、まずはチャレンジです。

<木型用の木>
 実はこの調達が一番頭が痛いです。何でもいいですが、サクラがベストですかね。固いので初心者には厳しいと思います。桂も柔らかめで初心者にはいいと思います。祖父は見た限り五種類くらいの木を使っていましたね。祖父の残した文章によると、最良は「しなの木」だそうです。「ほうの木」は彫りやすいとも書いていました。スギとかスプルースとかパインのような入手しやすい構造材も使ってみましたが、はっきりいって向きませんでした。練習にはいいかもしれません。
 彫りやすさと、水に強く、長年の使用に耐えうる木であれば、何でもいいのかもしれません。初めは柔らかめの木で挑戦するといいでしょう。

彫り方

1:図柄を作る
 彫る前に、何を彫るか?イラストを描きます。そのとき、どこをどれくらい彫るか?予め決めておかないと失敗します。

2:図柄の外側のラインを、木型に書き写す

 太めのラインで書いておきましょう。ペンでも鉛筆でも構いません。

3:電動彫刻刀で粗彫り

 電動彫刻刀で、彫り始めます。まずは中央で深く彫る場所から軽めのタッチで削っていきます。力を入れなくて構いません。無理をすると木が割れますので。トリマーを使うと簡単に設定までの深さまで彫ることが可能なので、いずれ導入しようと思います。
※一般的には外側から彫るそうです。深さ関係が理解できないうちは、外側からのほうが安全です。

4:丸刀タイプのノミを、軽く握って少しずつ削ります
 決して力を入れてはいけません。私の場合はホークを持つような感じで、少しずつ削っていきます。まずは外周ラインを削って徐々に形を整えていきます。外側がある程度仕上がったら中央に向けて徐々に形を意識しながら掘り進めます。

5:彫刻刀を利用し形を仕上げます
 エッジを効かさない部分からノミで削れなかった部分を仕上げていきます。丸刀でやってある程度仕上がったら、三角刀や切り出しでエッジを効かした仕上げをしていきます。

6:やすりがけ・ルーター仕上げ
 完成したら、やすりがけです。この部分は私の設備ではまだ課題が多いです。ただ、ちょっと荒くても、おこし型としての利用にはあまり影響しません。まずは作り上げることが大切で、その型から、おこし型を起こせることが大切です。

7:完成

この作品で三作目でしたが、3時間ほどかかってしまいました。

ちなみに私が一から、ウサギを初めて彫ったときは2時間程度。集中力の問題もあると思いますし、深さによってかかる時間が大幅に変わります。掘り終わってから、実際に起きるかどうか?実験し、また彫る・・・という作業の繰り返しなので、彫り上がってからのほうが時間がかかると思います。まずは薄いものから挑戦してみるといいと思います。

素人的彫り方のコツ

1:力を入れないで彫る
 これは、祖父と私の共通のアドバイスです。力を入れたくなるのですが、絶対に入れないように。木は割れやすいですし彫刻刀も傷みやすいです。そして木の仕上がりも力を入れるとよくありません。ペンだことかマメができるなんて論外です。最近毎週彫っていますが、私は手の痛みはありません。スプーンを持つ感じでやります。そう考えると切れの悪い彫刻刀などでは難しいので、やはりある程度性能が高く劣化しにくい彫刻刀・のみを選ぶ必要がありますし、手入れもマメに行う必要があります。

2:丸刀タイプの、のみを極める
 恐らく、ウサギや桃など基本的な型は、丸刀だけで大部分彫ることができます。しかし彫刻刀では、握りにくいですし最初の頃の粗彫りでは役不足です。そのため丸刀タイプののみを多用します。前半はほとんど、これだけで彫れますので、握りやすくて彫りやすいのみを購入しておきましょう。

3:彫る深さを予め決めておく
 失敗が多いのが、彫る深さの勘違いです。そのため立体イラストなどで描いておいて部分部分をきちんと仕上げながら彫っていきましょう。常に起き上がったものを想像して彫るようにしましょう。

4:鏡像であることを忘れずに
 左右が反転していることを常に頭に入れましょう。といっても難しいので左右対称の型や左右どちらでもいい型から挑戦したほうが無難です。

私の作例(2015年1月〜)


一番始めに私が彫った桃です。その後3回ほど手を入れてこの形となりました。
柔らかめな木を使って薄めの型なら、比較的短時間で彫れることが理解できました。
彫刻刀の使い方などが理解できました。ほとんどを丸刀で彫り、最後に平刀と三角刀を使用しました。


桃が思ったより早く彫れたので、同じ日の午後にウサギに挑戦しました。木が悪く苦戦しました。
桃に比べてシャープな彫りが多く、難易度は非常に高いです。電動彫刻刀や電動やすりを投入して、比較的早く彫れました。
ただ、見ての通り粗めの仕上がりとなりました。腕がないのはもちろんなのですが、木の状態や使用工具の影響も大きく2作目にして、様々なことが理解できました。後におこし型職人である祖父の指導で実用的な型になりました。

丸鯛は、佐渡のおこし型にあまりないので、作ってみたかったので彫ってみました。和菓子などを参考に一からデザインしてみた最初の型です。これも木の状態があまり良くないので、薄めの型として仕上げました。彫刻刀の使い方はかなり覚えたので作業はスムーズでした。薄いので起こしやすく、おこし型教室などでも人気がありました。出来ればもう少し深く彫っておけば良かったな、と思います。


佐渡の叔母の家に伝わる古典的なビワを参考に、ミニマムに深く彫ったものです。今までで一番深く彫っていますが、大きさは小さく、非常に可愛いです。深く掘るのに集中してしまい、全体的な凹凸があまりなく、若干のっぺりした仕上がりになりました。全体の仕上がりを考えて彫る必要性を痛感しました。


子ども向けにキャラクターを彫る練習です。見ての通り、あの妖怪です。耳も欠けるように刀を入れました。キャラクターは微妙なバランスで、似なくなってしまうので、デザインからかなり慎重にやりました。おかげで、一応見られる形にはなりました。曲面をきれいに彫るのが難しく電動のサンダーを投入した初めての作品です。まだ使いこなせておらず、今後の課題が残りました。


このあとも数作彫りました。鶴(上記写真)も彫れるようになったので、難易度が高くなければ、ある程度何でも彫れる目処がつきました。


2016年の新作(上)は、やっぱり妖怪。かなりなめらかに彫れるようになりました。まだサンダー仕上げていないにもかかわらず、起こしてみてもなめらかです。写真ではわかりにくいのですが下の妖怪とは雲泥の差です。やはりたくさん彫ることが上達の秘訣ですね。現在、新デザインの汽船も完成(若干の調整中)、丸鯛も完成しました。2016年は木材の供給が豊富になったため、次々に彫ります。

彫っていて気がついたことは、
・力を入れて彫ってはいけない
・サンダーはできるだけ使わない
・彫刻刀の平刀は、最後の局面ではできるだけ使わない。
・丸刀の種類はできるだけ揃える(大きさ、曲率さまざま)
・電動彫刻刀である程度彫ってから仕上げた方が力はいらない
・電動彫刻刀は軽めの力で彫り、一気に大きく彫らない
・電動彫刻刀は短時間利用にとどめる。手の感覚がなくなり彫りにくくなります
・紙やすりや電動ミニルーターはできるだけ使わない。エッジが甘くなるので仕上がりがぼやけます。


現在(2015年6月)の課題は、商品価値のある美しい型へ仕上げることです。正直、おこし型は蒸すので精度はあまり求められません。しかし市販の型は見た目にもキレイなのです。そこに近づければと日々精進を重ねています。

現在(2016年2月)の課題は、固い木でも、短時間で彫ることです。サクラに変えた途端、スピードが落ち、型が浅くなりがちです。やわらかい木と異なり、刃物への負担が半端じゃなくなるので、素直な彫り方と技術が必要になります。

現在(2019年1月)の課題は量産と省力化について研究しています。フライスマシンを使って彫る方法は、ある程度整形のエッジが効いているものには適します。トリマーで粗彫りは量産するときは、かなり効果があります。レーザー加工機を併用して裏側にイラストを入れると、裏側からでも判別出来るので実用化したいところです。
CNCフライスを使っての自動彫りも興味があります。ある程度単純なものは自動彫りで、複雑なものは、ある程度自動彫りでいって、最後は手彫りで仕上げるとずいぶん楽になるんじゃないかと。
本来、手で彫るのがいいのですが、価格や提供数など限界があるので、ある程度の自動化はやむを得ないと思っています。

inserted by FC2 system